2011年08月20日

夏のお修理2011 その1「司法解剖」編

Sterring Gearbox 07.jpg

F号が「前にも後ろにも走れるけど右と左には曲がれない残念なクルマ」
になってしまったのはまだ日本列島が本格的に暑くなる前のことでした
が、もうすっかり涼しくなってしまいましたね。みなさま、このクソ
暑い夏はいかがお過ごしだったでしょうか、オーシーツクツク。。。。


さて、今回ブッ壊れてしまったステアリングギアボックスは、アメリカ
のFlaming Riverという会社の製品。FoMoCo(フォード・モーター・
カンパニー)の純正部品ではない、いわゆる「社外品」です。これを取
り付けたのは今から10年ほど前のことでした。


14年前にF号を買った時は、元々付いていた純正部品のステアリング
ギアボックスは(当然ながら)すでにボロボロガタガタで、修理、また
は交換が必要な状態でした。が、もちろん半世紀も昔の純正部品が売っ
ているはずもなく、どうやって直せばいいのやら……………。
で、(当時も今も)アメリカで唯一リプロダクション(再生産品)の
ステアリングギアボックスをリリースしている(製造している、ではな
い)Flaming Riverのサイトで「オーダーメイドでファルコン用も作り
ます」という一文を見つけ、それにすがったワケでございます。オネダ
ンは700ドル以上もしました。高かった〜!(>_<;)。


ファルコンは、リプロダクションのステアリングギアボックスが販売
されておりません。というワケで「Flaming Riverでオーダーメイドで
作ってもらえる」ということを知るまでは、ユーズド(中古品)やら
リビルト(再生中古品)をアメリカ中からいくつも買ってみたのです
が、これが“パンドラの箱”を開けてしまった瞬間でした。


1960年代のフォードは、同じ年式の同じ車種でも同じ部品が使われて
いるとは限りません。ハイ、これこそ「プロでも嫌がるオールド・フォ
ードの整備」の、最大の理由でございます。この当時のフォードのクル
マはイヤーモデルの途中で何度も設計変更されているケースが多いため
「買った部品が付くかどうかわからない」というのが当たり前。
「1964年型ファルコン、V8、マニュアルステアリング」だけでも
(少なくともワタクシが知っている限り)サイズは2種類存在します。
もちろん、他の年式のファルコン、6気筒のファルコン、パワステの
ファルコン、マスタングやコメットなど兄弟車種とも、まったく互換性
がありません(-_-;)


というワケで、ワタクシもいくつも「ハズレ」を買ってしまい、それで
も「ハズレ」や「アタリ(だけどボロ)」のユーズド・ステアリングギ
アボックスを何個も(ベアリングのニードル1本まで!)バラバラにし
て、その中からマシな部品を寄せ集めて“2個イチ”“3個イチ”にして
騙し騙し使っていたのでした。


ちなみに、ファルコンはステアリングギアボックスを車体から脱着する
のも「ウルトラC」の難易度。というのも、ギアボックスがステアリン
グシャフトを一体構造になっているため全長が1メートル以上もあるか
ら(!)。車体をう〜んと高く持ち上げないと地面につかえてしまって
取り出すことができないのです。オマケに、ヘダースやらクロスメンバ
ーや周辺の部品をいくつも外さないとギアボックスを引き出す隙間もあ
りません(-_-;)


このように、ステアリングギアボックスはF号の部品の中でも最高に
メンドクサイ部品。触ってはいけない“パンドラの箱”なのです。
だからこそ、10年前に(一応新品の)Flaming River製ステアリング
ギアボックスを手に入れた時は「もう二度と壊れないでくれ!(>_<;)」
と強く願ったのですが……………。


その(一応新品の)Flaming River製ステアリングギアボックスですが、
ぶっちゃけ、取り付けた直後から「なんかヘン」でした。ゴリゴリとい
うイヤな感触、異常に早いギアの磨耗、それに伴って頻繁に強いられる
バックラッシュの調整、そのバックラッシュを調整するためのアジャス
トスクリューのネジ山もあっけなくバカになってしまい、そして、最後
に砕け散ったベアリング。ひとことで言えば「所詮、社外品だナ……」。

そのクオリティは到底、FoMoCo(フォードモーターカンパニー)の
純正部品には遠く及ばないレベル、というのが(おそらくFlaming
River製ステアリングギアボックスを実際にマジで使った唯一の日本人
である)ワタクシの、正直な評価です。ほとんど乗らないような“シ
ョーカー”に使う程度では気付かないでしょうが………。




では、壊れてしまったFlaming River製ステアリングギアボックスを
「司法解剖」してみます。。。。。。



Sterring Gearbox 01 .jpg

ステアリングギアボックスの構造。今回砕けてしまったのは「A」の
アッパー・セクターシャフト・ベアリングですが、バラしてみるとさら
にイロイロと問題が…………………(!)

Sterring Gearbox 02.jpg

あっけなくネジ山がバカになってしまったアジャストスクリュー。
本来なら「S45C」レベル以上の炭素鋼が使われていなければいけない
場所ですが、ぶっちゃけ「ナマ鉄」が使われちゃってますね、こりゃ。
メッキだけはきれいですが……。

Sterring gearbox 03.jpg

セクターギアがハウジングの底と干渉した傷跡。バックラッシュの
調整が限界に達してしまった証拠ですが、たった10年で? ギアの磨耗
が異常に早いのか、それとも、そもそもハウジングの形状がおかしいの
か?

Sterring Gearbox 04.jpg

Flaming Riverの「ファルコン用オーダーメイド」というのは簡単な
ハナシ「マスタング用ギアボックスにファルコン用ステアリングシャフ
トを熔接でくっつける」という荒技でした(!)。シャフトにパイプを
被せて熔接しているためシャフトが太くなってしまい、アッパー・ステ
アリングシャフト・ベアリング(図1のC)は二度と脱着できません
(>_<;)

Sterring Gearbox 05.jpg

ロワー・ステアリングシャフト・ベアリング(図1のD)のシャフト側
は錆びてもいないのに荒れ果てて凸凹! 本来なら高炭素クロム軸受け
鋼(SUJ材、通称“ベアリング鋼”)以上の材料が使われていなければ
いけない場所ですが、どんなスカな材料を使っているのやら? おそら
く、炭素が均等に分布していないような粗悪な材料が使われちゃってま
すが、そういう問題は“その国の鉄鋼業のレベル次第”なので………。

Sterring Gearbox 06.jpg

で、どこで作っているかといえば「アルゼンチン」でございます。
かつてMade in USAといえば「高品質の代名詞」でしたが、イマドキの
USブランド製品の大半は(たとえ有名なブランドでも)Made in USA
ではございません。とてもじゃないけど、本当にMade in USAが高品質
だった1960年代のアメリカ製純正部品と比較できるようなシロモノで
は……(-_-;)




というワケで、これは修理不能と判断し、ゴミ箱行きとなりました。




ではどうするのか? ハイ、ウチにはワタクシが10年以上前にジタバタ
と買い集めた中古のFoMoCo純正ステアリングギアボックスがまだひと
つ残っておりました。現状ではロワー・セクターシャフト・ベアリング
(図1のB)がなくなっている状態ですが、正真正銘“高品質な1960年
代のMade in USA”でございます。これを“高品質なMade in Japan”
のベアリングを使って“Made in Japanの匠”マルゼンモーターの丸山
さんがオーバーホールします。次回はその様子を(つづく)。


posted by フランケン at 15:48| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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