2011年08月29日

夏のお修理 2011 完結編

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Moon Autoから「修理が終わったよー」との連絡を受けて、クルマを
受け取りに行く。

6月25日にF号が動けなくなって運ばれてからちょうど2ヶ月。その間に
「今年の夏」はどこかへ行ってしまったみたいだ。昼ごろまでかろうじ
て残っていた暑さ、すなわち「残暑」も、一発の雷鳴とともにやってき
たゲリラ豪雨に押し流されてしまった。むしろそのほうが好都合だ。
日本の夏は旧いクルマには厳しすぎる。ただ、Moon Autoへ向かう道路
があちこちで冠水して通行止めになってしまったのは余計だった。溺れ
そうな勢いの土砂降りの中で、行き場を失ったクルマの群れはピクリと
も動かない。故障など無縁の最新型のクルマも、渋滞すればやはり動け
なくなってしまうことに変わりはない。この国でもっとも有効な移動手
段は、実は中古のスーパーカブなのだということを、この2ヶ月間でた
っぷり実感した。こんな国で、半世紀も昔の、しかも5000ccもある巨
大なエンジンを積んだアメリカ製の乗用車を、壊れても壊れても直して
乗り続ける理由? わかんねえだろうな。

夕方、Moon Autoに着く。世間のバカみたいな渋滞と豪雨が収まるまで
時間を潰す。清野さんとオレ、それぞれクルマに関わる別の分野の最前
線を突っ走ってきた(そして、少し疲れてきた)2人の中年男は、酒も
飲まずに缶コーヒーだけでいつまでも喋っていられる。実は彼が喋りな
がらマスキングテープを貼っているホイールは、名前を記せばひっくり
返るような超大物タレントの依頼で制作中のバイクのものだ。ずいぶん
前にバイクで事故を起こして大怪我を負って以来、バイクに乗ることを
周囲から厳しく禁じられているはずだが“乗れないバイク”でもいいか
ら欲しいのだ、という。金も名誉も地位もないけど自由だけはたっぷり
ある自分のほうが幸せ、なのかな………。

日付けが変わりかけるころ、自分のクルマに乗り込む。2ヶ月ぶりに座
る破れシートから手足を伸ばすと、自分の体が覚えている位置にピタリ
とステアリングとシフトレバー、そして3つのペダルがある。ああ、
これだ、これだ! けっして軽くはないけど、ステアリングやペダルか
らは、完璧に機能を回復した機械ならではのしっとりとした感触が手足
に伝わってくる。ステアリングとフロントタイヤの間にあるのはギアと
ベアリングだけ。パワーステアリングのポンプはもちろん、イマドキの
クルマに付いているようなコンピューターも電機モーターも介在してい
ない。クラッチペダルとクラッチディスクの間にあるのはステンレスの
ケーブルだけ。そもそもイマドキのクルマにはクラッチペダルが付いて
いない。なにもかもダイレクトな感触。それなりに腕力も脚力も必要だ。
だから心地いい。トラブルを潰して完璧に機能している機械の感触は、
快感だ!

ステアリングやクラッチが壊れると周囲の人間はすぐに「ラック&ピニ
オンに換えれば?」とか「油圧クラッチに換えれば?」と言う。ばーか、
だれが換えるもんか(笑)。これが半世紀も昔の、しかも5000ccもあ
る巨大なエンジンを積んだ浮き世離れした乗用車を、壊れても壊れても
直して乗り続けるたったひとつの理由なんだから。乗ってる自分には見
えないクラシックな外観なんて、実はどうでもいいんだヨ(笑)。

「じゃ、気をつけて!」という清野さんの声を背中に聞きながらエンジ
ンをかける。真っ暗な室内でメーターにオレンジ色の照明が灯り、深夜
にははばかられるような爆音が響き渡る(苦笑)。その爆音を押し殺す
ように小降りになった国道にゆっくりと出ると、昼間の渋滞はすっかり
解消されていた。めでたし、めでたし!(オワリ)

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posted by フランケン at 12:03| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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